線形多段階法の誤差の問題を考えるには、補間多項式の主要誤差が陽的公式と 陰的公式でどう違うかということを考える必要がある。線形多段階法の、特に 大域誤差の理論は難しいので、以下局所誤差について考える。局所誤差を考え る時に、 以外の値には数値誤差を含まないとして考える。この扱い でとりあえず大体のことはわかる。
一般に、厳密解は独立変数 tによるテイラー展開を持つとしてよいので、 p次の補間多項式で近似したときの主な誤差は p+1次の成分から出てくる。
補間多項式自体の誤差については、以下のような定理が知られている。証明は それほど難しくないので、やってみること。
定理:個の標本点 での、関数 の値 を標本値とする最小次数補間多項式 は以下の性質を持つ:
任意の xに対して、 および x を含む最小の閉区間に が存在し、
ここで、
である。
ここで、 が問題の区間で一定であると思えば、誤差は を積分したもので与えられる。
hでの等間隔補間の場合について、 での積分誤差(陰的ア ダムス公式の誤差)とでの誤差(陽的アダムス公式の誤差) の係数を、いくつかの p の場合について下の表にまとめておく(実際の誤差 は と書ける)。
すぐにわかるように、陰的公式の誤差は圧倒的に小さい。このために、同じ刻 み幅であれば陰的公式のほうがそれだけ精度がいいことになる。
が、初期推定として陽的公式を使った場合、精度という観点からは、一回だけ 導関数を評価して直接代入したもの (Predict-Evaluate-Correct, PEC) 、あ るいは反復をもう一回だけするもの [P(EC)]で十分であり、完全に収束さ せてもあまり意味がない。これは、精度の向上が、圧倒的とはいえせいぜい 1-2桁であるからである。
つまり、反復を繰り返しても、陰的公式の値に近付くが別に真の解には近付か ないのである。