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常微分方程式の初期値問題の例として、ポリトロープガス球のLane-Emden方程式を解
いてみよう。
恒星の内部構造の釣り合いを考えよう。
- 静水圧平衡
- 連続の式
- 状態方程式
- エネルギー輸達
- 吸収係数
- 吸収係数は、ガスの成分と状態による。
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(50) |
- エネルギー保存式
- 核反応生成率
- は、エネルギー発生率を表す。星のエネルギー源は核反応である。これは、
ガスの成分と状態によって決まる。
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(52) |
状態方程式
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(53) |
において、
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(54) |
として解く事を考える。これを指数 のポリトロープと呼ぶ。
すると、上の基礎方程式で、力学平衡を表す
静水圧平衡の式と連続の式の二本の式がエネルギーの式と分離する。
即ち静水圧平衡の式より
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(55) |
を得、これを連続の式に代入すれば
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(56) |
を得る。
ここで
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(57) |
( は 星の中心密度)
として、先の状態方程式を仮定すると
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(58) |
を得る。
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(59) |
で を定義し、
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(60) |
で 無次元変数 を導入すると
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(61) |
を得る。これを 指数 の Lane-Emden equation と呼ぶ。
星の中心 で
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(62) |
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(63) |
である。また になる点が星の表面に相当する。
Lane-Emden 方程式 (7.35) は、が、確定特異点になっている。
この様な場合、特異点の近傍での解のLaurent級数展開を考える必要がある。
いま、のまわりの形式解を
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(64) |
の形に仮定して、(7.35)式の両辺に代入すれば、左辺は、
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(65) |
一方、右辺は、
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(66) |
となる。 両辺のとの係数を比較して、
, を得る。よって、中心近傍での解は、
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(67) |
と表される。
例えば、,
とおくと、
(7.35)式は次の二元連立一階微分方程式となる:
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(68) |
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(69) |
この方程式を、 から外側に向かって、Runge-Kutta法で積分していけば良い。
中心は、明らかに確定特異点だから、初期値は、 ではなく、中心からわずかに
ずれたで設定する。そこでのの値は、上で求めた展開から得られる
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(70) |
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(71) |
を使って求める。
積分を進めて、になる点が表面である。そのをとすると、
星の半径は
となる。
中心からより内側に含まれる質量は
或いは、(7.35)式を使って書き直すと、
で与えられる。従って、星の全質量は
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(75) |
となる。
- 指数 、、及び
の場合について、Lane-Emden equation を Runge-Kutta 法を用いて数値的に解け。
- 太陽が のポリトロープで近似できるとして、その内部構造を求めよ。
但し太陽半径
km、
太陽質量
kg
とし、内部は完全気体の状態方程式
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(76) |
に従うものとする。
ここで は単位体積当たりの全粒子数、
はボルツマン定数。
今、水素、ヘリウム、それ以外の元素が質量比 である
完全電離理想気体を考える。水素原子の質量を で表わすとすると、
水素については核の数密度は
、電子の数密度は同じく
、ヘリウムについては核の数密度は
、
電子の数密度は
、それら以外の元素については、それぞれの
元素の atomic weight を 、atomic number を とすると、
核の数密度は
、
電子の数密度は
だから、
全粒子数 は
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(77) |
となる。
重元素については
だから、
水素とヘリウム以外の元素の質量比を
と表わす事にすれば、
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(78) |
であり、ガス圧は
ここに は
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(81) |
で、平均分子量と呼ぶ。また
JkgK。
(
JK、
kg)。
太陽の水素、ヘリウム、金属の質量比はそれぞれ
、、 とする。
- 白色矮星の内部では、電子は縮退し、その縮退圧が星を支えるようになる。
電子が完全に縮退した場合、
分布関数は
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(82) |
全電子数 は
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(83) |
だから、与えられた電子数に対しては は
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(84) |
であれば、
として、電子の縮退による圧力は
となり、のポリトロープに相当する。
ここで、
。
白色矮星の状態方程式を(7.60)式とした時、その半径と質量はどれぐらいにな
るか。中心密度は
を目安とせよ。
また、半径の質量依存性はどうなるか。
相対論的縮退の場合は、
となる。
状態方程式が(7.60)式で表される程の高密度の白色矮星では、
その半径と質量はどれぐらいにな
るか。同じく中心密度は
を目安とせよ。
質量が中心密度によらない事を導け。
この事の意味する所を考察せよ。
Hansen, C. J. and Kawaler, S. D. 1994,
Stellar Interiors, (Springer-Verlag, New York).
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Jun Makino
平成15年4月17日