さて、数値計算の精度がどうという話を別にすれば、2体緩和を考える理由はそ れにより系がどう進化するかを理解するということである。そのためには、粒 子の速度変化のモーメントの式から、分布関数の変化についての方程式を導く ことが有用であろう。
粒子の物理量の変化の1次と2次のモーメントから(高次の項の寄与を無視して) 分布関数に対する移流拡散方程式を導くことができる。この操作を通常フォッ カープランク近似といい、でてきた方程式をフォッ カープランク方程式という。以下、その導出を行なってみる。 これは、ボルツマン方程式の衝突項を求めることに対応する。
今、
が、速度
の粒子が、時間の間に速度変化
(の近傍の
の範囲)を受ける確率であるとする。
すると、 たった後の分布関数は以下のように書ける
(1) |
(2) |
(3) |
(4) | |||
(5) |
(6) |
これで、理屈の上では分布関数の変化が計算できるということになる。もちろ ん、実際にこれを解いて自己重力系の進化を調べるのは、必ずしも容易ではな い。その理由は、分布関数が6次元位相空間上で定義されること、それがジー ンズの定理を満たすように進化しなければいけないことである。具体的には、
というような困難があり、従来は、分布関数をエネルギーだけの関数と近似す る計算しか行なわれていなかった。1994年頃に、Takahashi が初めて の場合に信頼できる結果を得ることに成功した。しかし、これも、拡 散係数を求める時に、フィールドの分布は等方的であるという近似を行なって いる。
なお、モンテカルロ法など、もうちょっといい加減な方法ではある程度のこ とは出来ている。この辺についてはまた後でもう少し詳しく触れる。