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3 データベースの活用:銀河の三次元分布図を描く

天体の天球上の二次元分布は、直接見ることができるが、距離をも考慮した三次元分布 を見る事は容易ではない。そもそも天体までの距離を測る事は、 天文学の歴史を顧みれば判るように、 太陽系とか銀河系といった基本的概念を作り上げ、宇宙の中での我々の位置付けを 確定する上で、 天文学上の最も基本的且つ最も重要なテーマであった。 この事情は、今も、また、今後も変わりない。 銀河系の大きさが確定した現在、次に着目するのは、銀河がどのように分布している かということである。 銀河までの距離を測るのは、個々の星が分解して見えるほどの近くの銀河では、 セファイドの周期光度関係を使う。更に遠方の銀河は、既に距離が決定された近くの 銀河を参照に、距離と相関のある、見かけの物理量の様々な関係を使って、距離を決 定する。一方、スペクトル線のドップラー遷移で測定し て銀河の視線速度が測定されるが、両者の間には、 遠方の銀河ほど後退速度が大きいという法則(ハッブルの法則)がある。

Figure 5.3: 銀河の距離速度関係。
\begin{figure}\begin{center}
\leavevmode
\centerline{\epsfig{file=vel-distance.ps,angle=270,width=12cm}}\end{center}\end{figure}

更に遠方銀河の距離は、この関係を利用して、 スペクトルの赤方偏移で測るしか手段がない。 赤方偏移 $(z = \Delta\lambda/\lambda_0)$ は、宇宙膨張によって生ずるものであるが、 これを銀河の後退速度 $(v {\rm km\cdot s^{-1}})$と見做せば、$z$$v$ の対応は

\begin{displaymath}
{{v}\over{c}} = \{(1 + z)^2 - 1\}/\{(1 + z)^2 + 1\}
\end{displaymath} (7)

(但し、$c$は光速度で単位は ${\rm km\cdot s^{-1}}$) で与えられる。 $z < 0.05$ のときは、近似的に$v=cz$を用いても誤差は無視できる。 ハッブル定数を $H_0 = 75 {\rm km\cdot s^{-1}Mpc^{-1}}$と仮定し、 宇宙が平坦であるとして、何年前に銀河を発した光を我々が観測しているかに基づい て距離$d$ (光年) を以下のように計算することができる。
\begin{displaymath}
d = 3.26\times 10^6 {{2}\over{3}}{{c}\over{H_0}}\{1-(1+z)^{-3/2}\}
\end{displaymath} (8)

ハーバード大学のグループは、銀河の赤方偏移を隈無く測定するプロジェクトを行ない、 宇宙地図を描く事を行った。 銀河系から距離約1億光年以内にある銀河は、乙女座銀河団を中心とし、 薄い円盤部とそれを取り巻くハロー成分とから成る局部超銀河団を形成している。 この他に、かみのけ、ヘルクレス、うお-ペルセウス、うみへび-ケンタウルス等の 超銀河団が同定されている。 ハーバード大学のサーベイの結果、1億光年以上のスケールにわたって銀河の殆ど ない領域(ボイド)のあること、超銀河団とボイドが互いに入り交じって大規模な 構造を成している事が明らかになった。

このハーバード大学の赤方偏移カタログは、一つの銀河に対して、表5.3のような 情報が各行の指定された位置に、指定された形式で与えられている。

Table 5.3: CfA カタログの表記内容
項目 格納形式 行中の位置
名前 A11 1 - 11
赤経 (時) I2 12 - 13
赤経 (分) I2 14 - 15
赤経 (秒) F4.1 16 - 19
赤緯 符号 A1 20
赤緯 (度) I2 21 - 22
赤緯 (分) I2 23 - 24
赤緯 (秒) I2 25 - 26
B (等級) F5.2 27 - 31
後退速度 I5 32 - 36
後退速度誤差 I3 37 - 39
その他の情報   40 - 69
独立に求めた距離 (Mpc) F4.2 70 - 73
その他の情報   74 - 120

このカタログを読んで、宇宙地図を描いてみよう。 以下に掲げるのは、CfA カタログをVELOCITY.DAT [*]として、読み込み、赤経、赤緯 を度の単位に直した上で別のカタログに別の様式で格納するためのプログラム [*]である。 READ文が read(1,100)となっている事に注目しよう。最初の1は、ユニット番号 1番から読み込む事を意味している事、次の100は、 100番の文番号のついたFORMAT文の形式で読む事を意味している 事は、もう判ると思う。。 100番の文番号の文は、確かにFORMAT文になっており、表5.3の 形式で読み込もうとしている事が判るであろう。 同様に、WRITE文も、220番のFORMAT文を従えており、実数形式で 赤経、赤緯を書き込もうとしている。220番のFORMAT文での3xは、 3個の空欄を空ける事を意味している。文番号は、1文字目から5文字目までに書く 事が約束となっている。

      program main

      implicit NONE
      integer N
      parameter(N=50000)
      integer j,RA_hr,RA_min,dec_deg,dec_min,dec_sec,
     *        vel,number_of_galaxy
      real RA_sec,RA,dec,distance,sign
      character*1 dec_sign,minus

      data minus/'-'/

      number_of_galaxy=0

      open(unit=1,file='VELOCITY.DAT',status='OLD')
      open(unit=2,file='GALAXY.DAT',status='NEW')

      do  j=1,N
        read (1,100,end=20) RA_hr,RA_min,RA_sec,
     *	                    dec_sign,dec_deg,dec_min,dec_sec,
     *                      vel,distance
        RA=15.*(float(RA_hr)+float(RA_min)/60.+ RA_sec/3600.)	!in units of deg

        if(dec_sign.eq.minus)then
          sign=-1.
        else
          sign=1.
        end if
        dec=(float(dec_deg)+float(dec_min)/60.+float(dec_sec)/3600.)
     *         *sign

        write(2,220) j,RA,dec,vel,distance
        number_of_galaxy=number_of_galaxy+1
      end do
   20 write(6,131) number_of_galaxy

      close(1)
      close(2)

  100 format(11x,i2,i2,f4.1,a1,3i2,5x,i5,33x,f4.2/)
  131 format(////'   there are ',i6,' galaxies in the catalog'//)
  220 format(i7,3x,2f15.5,3x,i5,3x,f5.2)

      stop
      end

1 問題:ハッブルの法則

CfA カタログを使って、距離と後退速度が独立に測られている銀河に対して、 両者がどのような関係になっているかを距離-後退速度図を描いて示せ。

2 問題:宇宙地図

CfA カタログを使って、ある赤緯帯の銀河を赤経・距離の二次元マップ上にを描け。

Figure 5.4: 赤経8h-17h、赤緯$+26.5^{\circ }$-$+38.5^{\circ }$の帯状領域にある 15.5等級より明るい銀河の空間分布。赤緯については、これ以上区別せず、 同一平面上に描いてある。距離の単位は億光年。
\begin{figure}\begin{center}
\leavevmode
\centerline{\epsfig{file=geller.ps,angle=270,width=11cm}}\end{center}\end{figure}


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Jun Makino
平成15年4月17日