平木敬(東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授) 牧野淳一郎(国立天文台 理論研究部 教授)
Green 500 プロジェクトは、このような状況を予測したバージニア工科大学 のFeng 教授が2006年にIEEE で提案したことから始まっており、 HPL ベンチ マークでの電力あたり性能を順位付けすることで、電力あたり性能が高い計算 機の開発・普及を促進しようというものです。
今回、東大・天文台が共同開発した GRAPE-DR システムが Little Green 500List で首位を獲得したことは、次々世代のスーパーコンピュータ開発の最 大の課題の解決方向を、世界に示すことができた、という大きな意義があると 考えています。
今回の速度・消費電力の測定は、国立天文台三鷹キャンパスに設置された GRAPE-DR システム(写真1) で行いました。測定に使ったシステムは、 GRAPE-DR システム全体のうち64ノードであり、 1 ノードは GRAPE-DR ボード 1枚、インテル製 Core i7 -920 CPU、 ASUS 製マザーボード、18GB DDR3 メ モリ、x4 DDR インフィニバンドネットワークからなるもので、東大・天文台 で開発した GRAPE-DR ボード(写真4)以外は一般市販部品を使用しています。
GRAPE-DR ボードを利用せず、インテル製 CPU だけを使った場合、今回測定対 象にした HPL ベンチマークでの性能は 2.2 Tflops (Tflops は1秒に1兆回の 演算をする速度)となり、消費電力あたりの性能は 150Mflops/W (1ワットあた り 1億5千万回の演算)程度となります。 GRAPE-DR ボードを使うことで、同じ 台数のシステムで性能を 10 倍以上の 23.4 Tflops まで向上させ、電力あた り性能をも 5 倍以上の 815Mflops/W に引き上げることができました。この電 力あたり性能は、HPL ベンチマークでの測定結果として世界最高です。
ちなみに現在、世界最高速のオークリッジ国立研究所の Cray XT6 システムの 消費電力は、7MW(計算機本体のみ)にのぼります。これは、236Mflops/W に相 当し、今回のGRAPE-RDに比べると3分の1以下の電力あたり性能となります。
この世界最高の電力あたり性能を実現した要素となる技術は、以下の通りです。
東大・天文台は、上記の要素技術の開発によって、世界最高の電力あたり性能
を実現し、今年6月の Little Green 500 List で Top 1 にリストされました。
なお本発表は、文部科学省科学技術振興調整費、「分散共有型研究データ利用基盤の整備」で得られた成果に基づいています。
今後の発展
世界一の電力あたり性能は実現しましたが、 GRAPE-DR の性能にはまだ向上の
余地があります。今年度中にさらに 50% 程度の電力あたり性能向上の実現を目
指すとともに、より大規模なシステムの性能測定を行う予定です。このように
次々世代のスーパーコンピュータの課題に取り組み、さらに高い性能を実現し
ていくことで、スーパーコンピュータの発展に寄与していきたいと考えていま
す。
連絡先
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 平木敬
Tel:090-6482-9169 / Fax:03-3818-1073 / e-mail:hiraki -at- is.s.u-tokyo.ac.jp
国立天文台理論研究部 教授 牧野淳一郎
Tel:0422-34-3738 / Fax:0422-34-3746 / email:makino -at- cfca.jp
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関連リンク
資料写真等
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写真1 GRAPE-DR システム
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写真2、3 GRAPE-DR プロセッサチップ
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写真4 GRAPE-DR プロセッサボード
用語解説