赤木: (くらいの時間のあと)どう?
学生B:ええと、その、一応出来たと思うんですけど、3体でやってみるとなん か初期条件によっては時間刻みをものすごく小さくしないとうまくいかないみ たいなんです、、、
赤木: あ、それはそうなんじゃない?3体問題だと軌道がカオスになる 場合があるでしょ、その時だと、運が悪い初期条件だと2つの粒子がすごく近 づくことがあるから。粒子数をもっと増やして、星団とか銀河のシミュレーショ ンをやろうとすれば運の問題ではなくて必ずそういうことは起きるわけね。こ れをどうやって解決するかというのはちゃんと話をすると本1冊では終わらな いのよね、、、まあ、一番安直な解決は、物理法則のほうをいじるってのね。 つまり、ある適当な距離 くらいより近づいたらそれ以上引力大き くならないようにしちゃうわけ。式が簡単でよく使われているのはポテンシャ ルを の代わりに にする方法ね。微分すれ ばわかるけど力の式が簡単なのよ。
学生B:あ、なるほど。でも、物理法則を変えて大丈夫なんですか?
赤木: それはもう時と場合によるわけよね。まあ、真の解ではなくて数 値解をだすこと自体、物理法則を変えているみたいなものだから、同じような 話ではあるわけ。つまり、物理法則を変えたためにみたいものに入ってくる 誤差が、みたい精度に比べて小さくなっていればいいわけね。
学生B:でも、どうすれば物理法則を変えたことによる誤差ってのがわかるんですか?
赤木: まあ、それはいろいろやってみる、例えば上の場合なら の値を変えた計算をしてみて、答がどうなるかみるくらいしかな いわね。時々見かけるんだけど、これ変えた計算をして結果が変わらなかった ら大丈夫とは限らないの。つまり、あまりにも絶望的に答が間違ってるの で多少精度を変えても結果が変わらないこともあるのよ。
学生B:えー、でも、そうかどうかってどうすれば、、、
赤木: 、、、わかるかってのは難しいのよね。まあ、理論的に見積もり が出来ればいいっていうか、理論的な見積もりが全然できなければ間違ってる 可能性が高いと思ったほうがいいわね。それで、理論的な見積もりのほうは扱 う対象の物理的な性質やみたい振舞いがなにかとかいったことに依存するから、 あんまり一般的なことは言えないの。
あ、そうそう、3体問題くらいだったら、時間刻みを可変にして2つが近づいた らそれに応じて時間刻みを短くして、さらにどうしようもなく近づいたら解析 解でつなげばなんとかなるわ。ただ、可変刻みにするとシンプレクティック法 はそのままでは使えないの。どうしてかっていうと、ほら、調和振動の時 を思い出してみると、あれだと円が楕円になって、どんな楕円かは時間刻みに よったわけ。とすると時間刻みをふらふら変えると楕円になってくれるとは限 らないわけね。
数学的な話としては、シンプレクティック法というのはもともと公式自体が解 析力学でいう正準変換になっている、つまり、変換が物理系の性質を変えない ような公式ということになるんだけど、時間刻みを可変にすると正準変換では なくなっちゃうのね。それでもうまいことやれば時間刻みを可変にしてシンプ レクティック法の良い性質を保てるというような話もないわけではないけど、 ちょっとそこまで話がいかないわよね。