本稿では、1980年代後半に提案されて急速に研究が進んだツリー法とFMM につ いてその原理と現状を、特に多体シミュレーションに使う側の観点から簡単に まとめた。天文シミュレーションでは、精度の要求が低いこともあって実装が 容易なツリー法が広く使われている。 FMM が実用上ツリー法や PM法と対 抗できるようになるかどうかは依然未知数である。
なお、スペースの関係上、多体シミュレーション以外の分野への応用について はほとんど触れることができなかった。特に境界要素法への応用では、幾何学 の違いもあって適応的なFMMで非常によい結果が得られているようである。こ ちらについては 例えば文献[4][19]を御覧いただきたい。