ここでは、多数の質点間の重力相互作用や荷電粒子の間の静電相互作用を高速
に計算する手法として1980年代中頃に提案された FMM (Fast Multipole
Method, 高速多重極展開法)[12]と、それと非常に
関連が深く、やはり1980年代に提案されて広く使われるようになったツリー法
[4,6]について、その原理と研究の動向を概説する。
以下、問題を質点系の重力相互作用ということにする。別にクーロン相互作用
やそれ以外の(ポテンシャルでないような)相互作用でも、距離が大き
くなれば大きさが小さくなるようなものであれば原理が変わるわけではない。
また、粒子系以外でも、渦糸法による流体計算、偏微分方程式の境界値問題な
ど、積分形で書けるものには広く応用できる。そういった研究もなされている。
(例えば[2,1,13])ここでは、
そのような粒子系以外への適用は他の文献に譲り、粒子系に絞って原理と最近
の発展をみていくことにしたい。
まず、基本原理が単純であるツリー法についてその原理を説明し、次に FMM の原理を説明し、その次に、実際に使う上での問題点、最近の研究の動向等に ついてまとめる。