線形方程式の場合に、ステップサイズ0の極限で真の解に収束するということ を前に示したわけだが、計算機が実際に計算するときにはもちろん有限のステッ プサイズである。また、上に述べたように丸めの影響があって、どうせ収束は しない。そうすると、どの程度のステップサイズの時に計算精度がどうなるか ということを知る必要がある。
もちろん、プログラムを書いて、真の解との誤差を調べればいいが、もともと 数値解を計算するのは真の解がわからないからなので、そうはいかないわけで ある。
以下、一般の微分方程式に対してオイラー法がどのように収束するかというこ とを考えてみる。先週やった存在定理と同じように、常微分方程式の初期値問題
の での解を考える。今、 関数f が領域 で連続であり、最大値、最小値をもつと しよう。絶対値が M でおさえられ、 という関係がなりた つとする。さらに、上の範囲の任意の t, xと についてリプシッツ条件
を満たすものとする。さらに、n, h を、 を満たすように とる(nは整数)。
このとき、オイラー法が一様に一次収束する、すなわち、ある定数Cが存在し、
となることを示すことができる。
こんなのは当たり前と思う人もいるかもしれないが、なかなかそうでもない。 証明の方針としては、例によって具体的に を構成しておく:
今、真の解との差が欲しいので、こちらも書いておくと
差をとれば
絶対値をとれば
ここで A は定数である。今、
とおいて、さらにリプシッツ条件から変形して
ここで、明らかに なので、容易に(!)わかるように
ここで、 であったことを思い出すと
結局、
となる。
というわけで、一応、誤差の上限が存在して、それが hに比例するというこ とが示された。なお、上限の形をみるとなかなか嫌な格好をしていることがわ かる。つまり、時刻依存性が の形をしているので、積分を先に進め ていくと、 かならず誤差が指数関数的に増大していくことになる。これは、 言い換えれば、長時間積分した場合の精度については理論的にはなかなか難し い問題があるということである。この問題については、より詳しくはまたあと で扱うことにしよう。
なお、このような、ある時間範囲で積分したあとの誤差のことを「大域誤差」 という。これに対し、1ステップだけ積分したあとの誤差を局所誤差、あるい は局所離散化誤差という。