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5 力学平衡とジーンズの定理

もう一回式を書いておく。


\begin{displaymath}
{\partial f \over \partial t} + {\bf v}\cdot \nabla f - \nabla \Phi \cdot
{\partial f \over \partial {\bf v}} = 0,
\end{displaymath} (8)

ここで $f$は6次元位相空間での分布関数であり、 $\Phi$ は重力ポテンシャ ルであり以下のポアソン方程式の解として与えられる。
\begin{displaymath}
\nabla ^2 \phi = - 4\pi G \rho.
\end{displaymath} (9)

ここで、 $G$ は重力定数であり、 $\rho$ は空間での質量密度
\begin{displaymath}
\rho = m\int d{\bf v}f,
\end{displaymath} (10)

である。

なお、以下の議論では(当分) $m$ のことは忘れて、その代わり $f$ が個数 密度ではなくて質量分布であるということにしておく。

今日は、これらから、まず、「力学平衡状態」とはどう定義され、どういう性 質があるかということを考え、それから具体的な平衡状態の例を見ていくこと にする。

まず、「力学平衡」とは何かということだが、これは、上の無衝突ボルツマン 方程式とポアソン方程式を連立させたものの定常解、すなわち、時間的に変化 しない解ということになる。従って、ある分布関数 $f$ が力学平衡にあると いうことは、それによって決まるポテンシャル $\Phi$ を固定して考えた時に、 $f$ の時間微分が $0$ になるということである。

ここで、わざわざ「力学」とつけるのは、もちろん平衡状態にはほかにもいろ いろあるからである。もっとも重要なのは熱平衡の概念であるが、これはまた 後で。



Jun Makino 平成20年6月11日