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井田真人さんが 牧野淳一郎 氏の間 違いと具体的な指摘 ~ 岩波『科学』2019年9月号の記事について と
いうページで「牧野の岩波『科学』2019年9月号の記事には深刻かつ分かりや
すい間違いがある」という主張をされています。
結論からいうと、間違いがある、という井田さんの主張に私は同意し
ません。以下その理由を少し詳しく述べます。
井田さんの主張は、10月30日の彼の ツィートによると以下の5点です。
まず、
32. 井田さんからの指摘について (2019/12/23)
この5つのうち、後半の3つは最初の2つから導かれるものなので、以下では最
初の2つを検討します。
「1 mSv/年のオーダー」は誤訳
についてです。そもそも「1 mSv/年のオーダー」とはどういう意味かが問題ですが、牧野の科学2019年9月号記事では、その意味を以下のように書いています。(以下、原稿から)
もっとも大きな違いは、Publication 111 では長期目標が「1 mSv/年」だっ
たのが「1mSv/年のオーダー」になっている、つまり、数倍大きくてもいい、
となっていることでしょう。
これに対して、
市民科学研究室の
ICRP( 国際放射線防護委員会)の勧告改訂草案の日本語訳を掲載中という記事
にある山口一郎氏のコメントには
1.「the order of 1 mSv per year」 要点の下から2番目の「the order of 1 mSv per year」に関して、RSFの第 17回 放射線安全検討会〔アリーナ〕で瀬川さんがご質問下さり、本間さん からご丁寧なご説明がありました。 ・「the other of」は、地域などにより意味が異なり得るが、ここでは、お よそ1mSvという意味(a few mSv per yearであり1-9mSvではない)とあります。すなわち、a few mSv per year である、とICRP委員である本間俊充氏 が説明された、とのことです。そうすると、これは、 まさに、牧野が「科学」に書いた、「数倍大きくてもいい」ということである わけです。
なお、少なくとも物理学では、「1 mSv/年のオーダー」というのは日本語でも 1以上10未満までという意味ではなく、「1程度」であり、0.1 とか10 より1に近い、という意味で使います。0.5 とか 2 は「1のオーダー」です が 0.15 とか8とかは違う、3は?というとまあ時と場合による、というような感じです(πを1程度とすることは多い)。井田さんは、そうでなく1以上10未 満という意味であると解釈した上で「深刻な誤り」と書かれたのではないかと思います。
とはいえ、霞が関文学では 1 を 「-10」と書いて「10くらい」と誤解させる、 といったことは普通に行われますから、実際に原子力規制庁あたりでは 10以下であればよいことにする、といった解釈がでてきても私は驚きません。 そういうことが起こらないようにするためには、 order of 1mSv といった曖 昧な表現はそもそも使うべきではなく、 1 なら 1と書くべきですし、 order of 1mSv というのは a few mSv であるというならやはり積極的に 1mSv から緩和するものであるということになるでしょう。
次に、
「どちらも,被曝量が大きくてもよい,というほうに解釈されると考えら れます」は論理が不明。バンドが「1~20 mSv」から「0~10 mSv」に下がっ ているので、このような解釈は無理がある。についてですが、牧野の「科学」記事の該当する部分は
もう一つは、1から20 mSv のバンドの「下方部分」という表現がなくなっ た代わりに、10mSv は超えないように、となっていることです。どちらも、 被曝量が大きくてもよい、というほうに解釈されると考えられます。です。ここでは、牧野は
1から20 mSv のバンドの「下方部分」という表現がなくなっ た代わりに、10mSv は超えないように、となっていることです。ということが「被曝量が大きくてもよい、というほうに解釈される」理由と明 記しています。 なお、元の英文は
and there is generally no need for the reference level to exceed 10 mSv per yearなので、「通常は参考レベルが10mSv/年を超える必要はない」と書かれて、 これは通常でない事態であれば参考レベルが10mSv/年を超えることはありえる、 と解釈できます。一方、Publication 111 は
The reference level for the optimisation of protection of people living in contaminated areas should be selected in the lower part of the 1–20 mSv/year bandであり、generally という曖昧な表現はない代わりに the lower part of と いうこれはこれで曖昧な表現が使われていますが、下半分なら算術平均を中心としても 1-10.5 でしょ うから、実際上常に10 (0.5はまああまり大きな差でないとして)以下であるべ き、となります。また、 Publication 111 での、selected in the lower part は、10でよい、ではなくて1-10の「中で」ですが、
there is generally no need for the reference level to exceed 10 mSv per yearは、10超えてなければまあいいし超えることも場合によってはあってもよい、 なわけで、これをもって基準を厳しくした、と解釈するのは間違いであると 私は判断しました。井田さんの
バンドが「1~20 mSv」から「0~10 mSv」に下がっているので、このような 解釈は無理がある。という指摘は、
the lower part of the 1–20 mSv/year bandとある the lower part の部分を無視するものであり、適切な解釈ではないと考えられます。
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