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■ マネジメント厳選!PRESIDENT Special

PRESIDENT
2004年11.29号

特集/最新「叱り方」入門
ちょっとした「気くばり&テクニック」で効果倍増!
実践版!「職場の困った人」叱り分けガイド
同じ失敗を繰り返す「無反省部下」
イマドキ新入社員、年上部下、派遣社員……。叱りにくいあの人に
どう接するべきか。28年のサラリーマン生活で少なからぬ
「問題部下」を指導してきた作家の野村正樹氏と、
企業研修やプロ野球チームのメンタル・トレーニングで成果を
挙げる杉澤修一氏が語る、現場仕込みの「叱り分け」法、全10題の
中から、ひとつをご紹介します。


石田純子 = 文
text by Junko Ishida
作家・ビジネス評論家
野村正樹 = 談
Masaki Nomura
メンタルコーチ・スカンヂナビア社長
杉澤修一 = 談
Shuichi Sugisawa
阿部真理子 = イラストレーション


 叱り方ひとつで、部下は伸びもするし潰れもする。人を動かし、ミスを防いで成果を上げる責任を負う管理職には、叱る相手のタイプに合わせた「叱り分けの技術」が必要なのである。
 遅刻や忘れ物、チェックミスの頻発など、同じ失敗を何度も繰り返す部下は、どこにでもいて、また世話の焼ける存在でもある。感情にまかせて叱っても効果はなかなか表れず、馬耳東風の無反省ぶりに、叱る側が先に滅入ってしまいかねない。
 作家で、28年間のサントリー勤務経験を生かしたビジネス書のヒットメーカーでもある野村正樹氏は、こんな困った部下を叱るコツを次のように説明する。
「これは悪い癖がついてしまっているわけですから、その人に『矯正ギプス』をはめて無理矢理直させるしかないですね。朝30分遅刻してくる部下には、今より30分早い時刻に起きると約束させる。忘れ物をする部下には、必要なものをいったん紙に書き出させて、それをパソコンの横にでも張るようにし、外出前には必ずそれを見なさいと、そこまで言い含めるのです。そして直るまで上司がチェックする。半年くらいかかるでしょうが、歯の矯正や骨折のリハビリと同じなんだと腰を据えて取り組むしかない」
 小学生じゃあるまいし、などと言うなかれ。単純だが根深い失敗は、まさしく子供の目線に合わせる感覚でじっくりとつきあうことが肝心なのである。その点に関しては、一流スポーツ選手のメンタルコーチとして知られ、経営者でもある杉澤修一氏も同意見だ。
「このタイプの部下は『何やってるんだ、ダメじゃないか』と叱っても、叱責の本質を理解せず、落ち込んでまた同じ失敗を繰り返す悪循環に陥ってしまうだけ。自分で考えさせることが必要なのです。そこでまず『どうやったらミスをしなくなると思う?』と問いかけ、部下から『こうすればできると思います』という答えを引き出すこと。答えは抽象的なものではなく、具体的に言わせてください。それであとは実行できるかどうかを見ていきます。できなければなぜできなかったのかを分析させる。そして再びできるためにはどうするか、と問いかけて答えさせるのを繰り返していく。一見、時間がかかる方法に見えますが、効果は確実に表れるので、最もよい方法だと思います」(杉澤氏)
 いずれも忙しい管理者にとっては手間暇のかかる方法だが、「無反省部下が全社員に占める割合は大きい。この手の部下の矯正に情熱とエネルギーの半分を割いてもいい」(野村氏)というほど深刻であり、半面、正面から取り組めば成果の上がる課題なのである。「使えない部下」を「有能な人材」に変えるステップと心得、じっくり向き合ってみよう。

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