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[2006年 4月 23日]
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発信箱:ニセ科学の罪 元村有希子(科学環境部)

 万有引力の法則で有名な英国の科学者ニュートンは、錬金術の研究にも熱心だった。

 銅や鉄から黄金を作り出すという錬金術は後に「ニセ科学」のレッテルを張られ、彼の錬金術関連の資料は図書館も受け入れを断ったほどだ。結局、経済学者のケインズが買い取った。

 21世紀の日本にもニセ科学は健在だ。物理学者たちが先月開いた、ニセ科学に関するシンポジウムで紹介されたのは、「水が言葉に影響される」という珍説だった。

 水をコップに入れ、いろんな音を「聞かせる」。その後凍らせる。「ありがとう」やモーツァルトの曲だと凍った水は美しい結晶を作るが、「ばか」やハードロックでは結晶がきれいにできないという。そうした結晶を示す写真集が売られている。

 この珍説を科学的に説明できる根拠はない。写真を見せられても、実験をしてみなければ本当のことは分からない。だが複数の小学校の先生が、道徳の授業で「きれいな言葉を使いましょう」という教訓とともに教えたというから驚く。

 日本はニセ科学への免疫を持たないようだ。血液型による性格診断も、宴会での座興で済めば罪はないが、会社や学校で差別的に使われているのは見過ごせない。

 理科教育の失敗ともいえる。物事を合理的に考え、批判できる素養を養うという目的は色あせ、黒板に書かれたことをうのみにさせている。

 これまでニセ科学を「うさんくさい」と冷笑するだけだった科学者が、向き合う姿勢に転じたことは収穫だ。今後の展開に注目しよう。

毎日新聞 2006年4月12日 1時01分 (最終更新時間 4月12日 1時02分)

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