東京大学(東京都文京区)の似田貝香門(にたがい・かもん)・副学長(60)=文学部教授=の研究室が、カラ出張をして国の補助金を不正に受け取っていたことが4日、朝日新聞社の調べで分かった。不正は副学長の指示で行われ、文部科学省の外郭団体「日本学術振興会」の科学研究費補助金(科研費)として98年度から3年間に支払われた出張旅費約900万円のうち、約500万円がカラ出張とみられている。似田貝氏も事実を認めており、同日までに大学へ副学長職の辞表を提出した。
大学教員による科研費の不正流用は、たびたび問題化している。東大でも、医学部の堤治教授が停職1カ月の処分を受けたばかり。似田貝氏は6月に堤教授の処分について記者発表しており、「ずっと後ろめたさを感じていたし、責任を感じている。これ以上、副学長にとどまって大学に迷惑をかけることはできない」と話している。
科研費支給の対象となったのは、阪神大震災後に活動したボランティア団体の活動や、街の再生の様子を探った研究。日本学術振興会の課題に指定され、成果報告書も提出されている。補助金として、98年度1040万円、99年度580万円、00年度150万円が支給された。
研究室の「旅行命令伺」「旅費の支出依頼書」など出張に関する公文書によると、98年度から3年間で、似田貝氏や大学院生らは、神戸、青森、福岡などへ計40回出張し、約900万円の旅費を受け取っていた。
このうち神戸には、震災後にできた地元非政府組織(NGO)や、被災地の障害者を支援するネットワーク幹部などへのヒアリングのため、25回出張したことになっている。
似田貝氏によると、このうち5回、約70万円分は実際には行っていないという。
また、似田貝氏は大学院生らとともに福岡県を9回、青森県を2回訪れ、現地のNGO関係者から震災での活動について聞き取り調査をしたとして、出張旅費を申請していた。
ところが、いずれも似田貝氏本人は一度も現地には行っておらず、大学院生も1人が1回福岡を訪れただけで、11回、約420万円分がカラ出張だ、という。
カラ出張はこの3年間に継続して行われ、カラ出張を申請する際には、研究室から「旅行命令伺」などの見本が院生らに示され、その内容通りに記入して提出するように指示された。カラ出張でプールした金は研究活動に充てられ、私的な目的には使っていない、という。
似田貝氏の専門は社会学。同大の大学院新領域創成科学研究科の科長を経て、今年4月から3人いる副学長のうち、広報担当を務めている。
(08/05 06:01)
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