最新の施設を備え、昨春開業したばかりの六本木ヒルズ森タワーで、まさかの死亡事故が起きた。再開発ラッシュで、需要が高い自動回転ドア。しかし明確な安全基準がなく、その危険性を指摘する声もあった。
六本木ヒルズを管理する森ビルによると、ヒルズ内の自動回転ドアでは過去に2回、子どもが頭をドアに挟まれるなどして救急車で運ばれる事故があった。
最初は昨年11月25日。2歳の女児が足首を挟まれ軽傷を負った。さらに12月7日には、今回事故があったドアの脇にある別の回転ドアで、6歳の女児が頭を挟まれて打撲傷を負ったという。
この2件の事故を受け、閉まる寸前にドアに駆け込まないよう、手前に障害物を置くなど対策をとっていたという。
事故のあった回転ドアのメーカーの親会社である三和シヤッター工業によると、このドアは人が挟まれるのを防ぐため、赤外線センサーが6カ所ある。何かに遮られると急制動がかかる仕組みだ。ただし、「感知した後もドアは5センチ程度動く」と説明する。
同業他社によると、高層ビルの大きな出入り口には自動回転ドアが使われることが多い。日本では十数年前から使われるようになり、ここ数年は都心の再開発ラッシュで需要は高い。
死亡例は初めてとみられる。あるメーカーの担当者は「子どもが突っ込んできても止まるはずだが」と驚く。別のメーカーは「センサーで人を感知してからドアが完全に止まるまでは動く。車が急に止まれないのと一緒」と話す。
回転ドアが多く使われる理由は建物の気密が保たれることだ。スライド式だと頻繁に開けば風が自由に吹き込み冷暖房の効率が悪くなる。また吹き込んだ風で上層階に向かって気流が発生し、その圧力で建物内の部屋のドアが開けにくくなる。
難点は挟まれる危険があることで、メーカーが独自に対策を競ってきた。センサーで人の接近を感知して扉の回転を止めたり、速度を緩めたりする。ドアに直接ぶつからないように緩衝材を入れることもあるという。
だが、安全性に公的基準はない。社団法人公共建築協会(東京都千代田区)が独自の評価制度を設けている程度だ。協会の楢崎龍夫建築生産第一部長は「試験は義務づけられておらず、評価基準内であれば速度や開閉力の調整はメーカーに任せるしかない」という。
六本木ヒルズは、東京都都市計画局が建築確認をした建物で、都は26日、事故を受けて森ビル側から事情を聴いているが、回転扉には法的規制がないことから、都としても今後の対応を決めにくい状況だ。
(03/27 01:59)
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