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SPH法

牧野

1998/12/3

要約

あんまりネタがない(GRAPE-6の作業---東芝とIBMの分---が遅れている)ので、 ちょっとまとまりがないが SPH 計算について最近ちょっと考えたこと/実験 した結果の話をする。

話す内容

  1. なぜ今SPH法か?
  2. 何をしたいか?
  3. SPH のパフォーマンス評価の現状
  4. テスト計算:標準 1 D shock tube 問題でのエントロピー生成
  5. これから?

なぜ今 SPH法か?

  • いろいろ、それほど良く研究されているわけではない自己重力流体の問 題がある。

具体的には:

  • 星同士の衝突、潮汐捕獲
  • giant impact

まあ、その、ほかにそんなにいろいろ手持ちがあるというわけではないが、少なくともこれらは 「穴」である。というのは、

  • 大変重要な問題である
  • やっている研究グループの数が非常に少ない(1ないし2)
というところが共通しているから。

Giant Impact について

  • 月の起源として現在もっとも有力な説

基本的な考え: 火星くらいの大きさの原始惑星が地球にぶつかって、飛び散っ た破片が集まって月になる。

シミュレーション例:

Benz, Slattery, Cameron, Icarus 66, 515-535 (1986)

--- constant smoothing length
--- Tillotson's equation of state

インパクトの詳細についてわかっていること:ほとんどない

初期条件(軌道要素、質量、組成、自転)が決まったとして、現在までのシミュレーショ ンには以下のような問題がある

  • 相転移(特に蒸発)が計算できない
  • ショックによる加熱がどれくらい信用できるものかわからない
  • 状態方程式が信用できるかどうかわからない

根本的な問題:世界で一人しかやってないということ:独立な計算によるチェッ クが必要

星の潮汐捕獲 について

基本的な考え: 近くを通れば潮汐力による散逸が起こって連星になる

  • 球状星団のなかの exotic stars を作るもっとも有力な機構
  • 球状星団に熱源を供給?
  • LMC のコンパクトな星団や、銀河中心近くにある(?)星団でも高い確 率で起きる 中質量ブラックホール?

良くわかっているとはいい難いこと:

  • 潮汐捕獲連星は安定か?

いろんな説がある:

  • カオス説(Mardling 1995A, 1995B): 内部自由度と軌道運動の間のエネ ルギー、角運動量の交換はカオティックであり、なにが起こるか良くわからな い。根拠:単純なモデル計算
  • 何でも合体説 (Lai et al. 1993): 捕獲されたもののほとんどは合体す る。根拠:SPH計算(N=800 (!))
  • 破壊説 (Kochanek 1992): 特にコンパクトスターと普通の星を考えると、 捕獲されたもののほとんどで普通の星のほうが破壊される。根拠:単純なモデル計算

潮汐捕獲(つづき):何が正しいか?

モデル計算の問題点:

基本的には仮定に結論が入っている

Mardling の計算: 星は破壊されないし、モード間カップリングによる短波長のモードへの 輸送も無視

Kochanek の計算:モードの熱化を無視。破壊に対する仮定は適当。

SPH 計算の問題点:

  • 振動モードが勝手に熱化(数値拡散)する
  • 衝撃波による加熱の精度
  • その他もろもろ

N=800 を信用しろというのはちょっと、、、

信用できる流体計算ならば「正しい」と思える?

SPH 計算はどれくらい信用できるかということ

他人の仕事: ほとんどのコード比較は、1D shock tube 問題

これはほとんど意味がない

理由:

  • 粒子数が多過ぎる。典型的なデモンストレーションだと N=400. これ は3次元なら に相当。
  • 大抵の計算例で、 fixed smoothing でやっている
  • 人工粘性の shear flow に対する影響がわからない。
  • 単純な超音速流なので、亜音速領域でのスキームの振舞いや、人工粘性 の効果が押えられていない。

3次元ショックの計算例

=14cm Lombardifig14.ps

cm Lombardi et al. (astro-ph/9807290) からとった、3次元()と1次元 (N=2500)の比較。

``The 3D calculation does well at reproducing the major features in the thermodynamic profiles, but, not surprisingly, smoothes out any small scale structure which occur on lengths scales shorter than a few smoothing lengths.''

もうちょっとまともなテストは?

最近いくつか論文がある

Lombardi et al. (1998) (さっきのショックチューブの論文)

  • particle diffusion in box/polytrope
  • shear flow

Thacker et al. (1998)

  • various tests in cosmological context

これらの比較の目的:(特に人工粘性の)いくつかの実装間の比較

  • エントロピー生成
  • 収束性

等をきちんと調べたものはほとんど ない

というわけで、実験

適当に SPH を書いてみた(いまのところ、テストは1次元、重力なしでしかやっ てないが、コードは3次元でも動くように書いてある)

概要:

  • symmetrized (a la Hernquist-Katz) spline kernel
  • symmetrized Monaghan-Gingold equation of motion
  • Gingold-Monaghan AV
  • semi-implicit variable smoothing a la Steinmetz
  • P(EC) 2nd-order Adams-Moulton integrator
  • shared, constant timestep

まあ、ごく標準的な実装といえる。leap-frog のかわりにP(EC) を使って るのがちょっと普通ではないが、まあたいした問題ではない。

1次元ショックチューブ

14 cm [56 44 588 430]/usr2/makino/src/sph/std_40.ps

14 cm [56 44 588 430]/usr2/makino/src/sph/std_160.ps

1次元ショックチューブ(つづき)

14 cm [56 44 588 430]/usr2/makino/src/sph/std_640.ps

14 cm [56 44 588 430]/usr2/makino/src/sph/std_2560.ps

1次元ショックチューブ(つづき)

{

他の人の解の例

HK 89 (N=400, costant h)

10 cm HK89fig2a.ps
Lombardi et al 1998 (N=2500, costant h)

9 cm lonbardifig12.ps

エントロピー生成

=14cm /usr2/makino/src/sph/entropy.ps

  • 一応厳密解 (0.0114 くらいのはず --- Rasio & Shapiro 1991 による)に近 付いてはいる。
  • しかし、例えば N=100 では誤差は 100% 以上である。

他の人の結果を信用すると、 GM AV は1次元ショックの問題ではもっともよい ということになっている。

MPSって?

前のページのグラフで線が2本あったが、その下の方は通常とは違う方法で人 工粘性を与えている。

これは役に立つかどうかわからないが、ちょっと面白いので解説しておく。

通常の SPH では、ある量 の勾配を以下の様にして推定する。

べつにこれに文句があるというわけではないが、これが唯一の方法という わけではない。例えば、

d は空間の次元数)

というものでも、連続な に対して で正しい推定を与える。

これは私の発明ではなくて、非圧縮性流体用に開発された粒子法 MPS (moving particle semi-implicit method, Koshizuka 1996) で使っている空間差分項である。

Wとして原点で滑らかでないものを持ってきているのと本質的には同じこ と)

例えば圧力とかにこれを使うのはそんなに意味はないが、人工粘性につい ては

  • より近くが効くようになる。

  • 小さな h を使うよりもちょっと安全でもある。

(まあ、どれくらい意味があるかはよくわからないんだが)

これから?

というわけで、今日の話は、

というお話でした。

というわけで、かなり SPH というものが信用出来ない気分になったけど、ちょっ と暇をみて衝突とかの3次元計算をして、本当にそれほど信用できないかどうかを調 べようと思ってます。





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Jun Makino
Wed Dec 2 14:12:00 JST 1998