113. 情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ概念設計評価作業部会(第2回) 配付資料 (2012/6/13書きかけ)
情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ概念設計評価作業部会(第2回) 配付資料
が公開されました。これは「京」(当時は次世代スーパーコンピューターとい
うプロジェクト名でしたが)の開発方針を決定した大変大事な会議です。
この中でも特に重要のはマル秘マーク付きの
これです。
スライド 25 には、2007年段階でアクセラレータを採用しなかっ
た理由が書いてあります:
「2者のシステム構成により、目標性能達成の見込みが確認できたため、
アクセラレータの採用は考慮しない」
つまり、アクセラレータ付きの構成と無しの構成の優劣は比較しないで、
「アクセラレータ無しで目標達成できるからアクセラレータ無しにした」
という論理です。これは設計の比較方向としてはかなり奇妙なものである
ことはいうまでもありません。
まあこういう報告が奇妙なのはそういうものかもしれないのですが、
スライド5を見ると、アクセラレータ案である国立
天文台案(牧野)、東大案(平木)について、「アクセラレータ部消費電力 -10MW」
(この 「-」は意味不明だが、「公開時の注意書き」からは「10程度」の意味
と思われる)と書いてあります。10MW なんていう数字を出したおぼえは
ないのでこれはなんだろう?と思うわけですが、良く見ると
「公開時の注意書き」なるものがあります。
「消費電力については、 10MW以下、10-20MW、20-30MW の範囲でまとめたもの。
提案はホスト部を除いて 1.7MW であった」
つまり、ペタスケールからそれ以降の計算機についてもっとも重要なファ
クターといってもよい消費電力について、 1.7 MW や 0.88MW を 「-10MW」と
した資料を当時は配布して、それによった説明をしています。公開する時にあと付けの言
い訳に「これは 0-10MW にまとめた」をつけているわけでです。
この言い訳が言い訳であることはスライド16をみればわかります。 NH, F 案
については消費電力推定が小数点以下まで書いてあるからです。
いずれにしても、トータルの消費電力が 10-20MWの話をしているわけですから、
アクセラレータの電力が 10Pflops で 10MW なのか 1MW なのかは大違いです。
10PF で 1MW なら(まあ実際こんなものですが)、数MW の追加で 30PF にでき
たわけですし、そのためには汎用側の構成を少しだけ小さくすれば良かったか
らです。
ちなみに当時天文台が出したレポートは
ここの報告書等
のとこにまとめてあります。
ここにはベンチマークの
数字 もあり、スライド 21-23 の NH, F 案の数字
と比べて見ると大変興味深いことになっています。まあ私の見積もりが若干楽
観的なことは否定しませんが、アクセラレータと汎用で推定性能に意味がある
差はありません。
この数字はもちろん理研に提出されているわけですが、理研が作ったスライド
ではアクセラレータのベンチマークの
数字はそもそもだされていません。要するに、電力の数字を作った上で
性能評価の数字はださないでアクセラレータを落とす説明をしたわけです。
実際の説明は?というと、議事録もちゃんとあります。
議事録P11には、「消費電力が10MW以下ぐらい」とあり、確かにアクセラレー タのベンチマークのことは一言も書かれていません。
まあ、数字は作ったといってもいいと思いますが、それ以外は本当のことでも大事なことは隠す、という手法によっているわけですね。