87. 中国での GPU(2010/7/30)
GPU Solutions to Multiscale Problems in Science and Engineering Workshop という研究会に呼ばれてハルピン
にいってきました。まあ、私は GRAPE-DR とか Little Green500 とかそうい
う話をしたわけですが、中国では結構大規模な GPU クラスタがどんどん構築
されているのに感心しました。
日本には、中国の GPU クラスタは Linpack のためだけに作られている、とい
うようなことをまことしやかにいう人がいたりしますが、現実はそれとは全く
違うようです。むしろ、これまでの、過去からあるアーキテクチャ用のソフト
ウェアの蓄積があまりないところで大規模な HPC システムを構築し、それを
プラットフォームにして新しく研究グループを立ち上げよう、という時に、
現在の瞬間に(まあ、見かけだけかもしれないとはいえ)もっと価格性能比が
高い解が GPU クラスタである、ということでしょう。
まあ、その、現在のところ研究レベルはまだまだで、似鳥君、濱田君や東工大
のグループのほうがかなり先をいっていますが、しかし、研究に関わっている
人数、投入されているハードウェアの量は桁で違っています。で、アプリケー
ションの種類も非常に多様です。
GPU だけがスーパーコンピューターの将来と思っているというわけではなくて、中国では
自前の CPU もやってます。日本との大きな違いは、日本では「次世代ス
パコン」が唯一の国家プロジェクトとして走っていて、他のハードウェア構
築や研究を立ち上げることすらできないというふうになっているのに対して、
自前の CPU もやるし GPU での大規模クラスタも数箇所に構築、アプリケーショ
ン開発はそこらじゅうでやる、という感じで広くやっていることです。
大規模なハードウェアがどんどん構築されているので、使っている予算は大き
いか、というと、それぞれが実は日本の7大学センターの予算に比べて差はない
と思います。この辺は、東工大の松岡さんがいっている通りで、そんなお金を
払って、、、という話ですね。
ヨーロッパも結構色々やっている、という話を、ずーっと昔に TMC にいた
Lennart Johnson がしていて、これも興味深いものでした。 GPU のほか、
Clearspeed の大規模クラスタ、QPACE、また低消費電力版の Opteron クラスタ
と、様々なものが試みられています。
まあ、要するに、日本以外はどこも、一つだけの国家プロジェクトにお金を
全部いれて、他の芽をつぶすようなことはしていない、というだけのこと
のような気もします。思想が15年遅れのプロジェクトを続けることが悪いわけ
では必ずしもないのですが、もうちょっと新しいことも並行してやらないと
確実に将来はなくなるわけですから。
というようなことは機会がある度に、というか色々機会を作って理研や文部科
学省の人にもいっているわけですが、まあ、手遅れになって5年くらいたって
から反応するのではないかと思います。