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23. 今年の1番茶、牛乳、牛肉 (2012/10/9 追加)

23.1. 国産一番茶

我が家の近くの某コンビニで買った国産一番茶と書いてある100gパッケージの測定結果を 図 85 に示します。45 ± 24 Bq/kg (誤差は3σ)となりました。

但し、以前我が家で測定して、 100±30Bq/kg と数字をだしていたお茶を某所 EMF211 で測定したらちょっと高い数字(但し、若干測定ジオメトリに問題あり) の数値がでたので、我が家での測定は絶対値は低い目にでている可能性があり ます。倍は違わないと思いますが、、、、

Figure 85: 某コンビニで買った国産一番茶。重量100グラム、測定は8時間。結果は24時間に正規化。バックグラウンドは24時間測定。

まあその、お茶は今年もでている、ということです。50 Bq/kg や100は飲む時 にはずっと薄くなってるから問題ない、と思う人はこれを飲んでもいいかもし れません。お茶は毎日飲むわけですから、汚染されている可能性が高いとわかっ ているものをわざわざ飲む必要はない、と思うなら、少なくとも自宅では鹿児 島とか西日本のお茶を飲むほうがいいでしょう。

しばらくぶりに測定結果を出すので、このグラフの見方を説明しておきます。 これは、我が家にあるテクノAP社製CsIシンチレーションカウンター TC100S を 8cm くらいの鉛遮蔽の中にいれた環境での測定です。横軸はγ線のエネル ギー、縦軸はチャネルあたりのカウントです。TC100S は0から 1.5MeV までを 512チャネルに分割しています。カウント数は、実際の測定値を 24時間、つま り1日あたりのカウント数に換算して示しています。

緑色はバックグラウンド、つまり、サンプルをいれないか、または水をいれた 状態での測定です。赤はサンプルをいれた状態での測定です。これら2つの差 をとって、さらに 0.3MeV から積算していったものが黒の線です。また、青の 線は、サンプルとバックグラウンドの値から計算される、積算した差、つまり 黒線の誤差の標準偏差です。

私のプログラムでは、 0.3-0.8MeV の間を積算した量からセシウムの量を求め ます。この時に、カリウムの量は食品にはいっているであろう量からこのエネ ルギーレンジにはいってくる量を推定して、その分を補正するようにしていま す。シンチレータに大きな結晶を使った高価な機械では、こんなことをしなく ても直接スペクトルからカリウムの量を決めることができますが、TC100S では それは困難です。また、Cs の定量自体も、エネルギーピークがある狭い範囲で はなく、コンプトン散乱による反応の相当部分を勘定にいれるため0.3MeV と低 いところから合計しています。

青の線が誤差なので、0.8MeV のところで誤差の3倍より上にきていれば検出は 有意ですが、カリウムの分を引くとこのグラフではセシウムがあるように見え ても実はない、ということがあります。

23.2. 牛乳

86 は上のお茶と同じコンビニで買ってきた産地が書いてない大手メーカー の牛乳です。牛乳はそのまま測定では我が家の環境では検出限界以下になるで あろう、ということで、テフロン加工のフライパンで煮詰めてから測定にかけ ています。

Figure 86: 某コンビニで買った牛乳。1リットルを煮詰めて250g 程度にしてから8万秒測定。結果は24時間に正規化。バックグラウンドは24時間測定。

煮詰めて測定しようと提案して、実際に煮詰めたのは私ではないです、とそん なことはともかく、煮詰める前の値に戻すと1.67 ± 1.65 Bq/kg となりました。 グラフでは5σくらいありそうなのに、測定結果では3σになっているのはカリ ウム補正の効果のためです。ここでは、カリウムが牛乳1リットルあたり 1.5g としました。グラフの形からはこれはちょっと多すぎるのではないかという感 じもするので、本当のセシウムの量は1.67Bq/kg よりももうちょっと多い可能 性が高いです。

東京で普通に売っている牛乳に 2Bq/kg 近くもの放射性セシウムがはいってい る、というのはかなり意外な結果ですから、検証が必要です。検証として、産 地が西日本(島根県)と書いてある牛乳を同じ方法で測定してみました。これは 某デパ地下で購入したものです。図 87 にスペクトルを示します。 コンビニ牛乳と同様にカリウムを 1.5g/l として補正すると、セシウムの値は 0.2 ±1.7Bq/kg となり、セシウムゼロと矛盾しない数字でした。ですので、上 の 1.65Bq/kg は測定誤差、というわけではどうもなさそうです。

Figure 87: 某デパ地下で買った島根県産牛乳。1リットルを煮詰めて250g 程度にしてから6万秒測定。結果は24時間に正規化。バックグラウンドは24時間測定。

牛乳は今年度初めからの新基準でも 50Bq/kg という値ですから、法律上は 1.67q/kg は全く問題のないものですが、子供に飲ませるのは、、、と思う人は 西日本や北海道産とわかっているものを調達すれば、測定までしなくても セシウム含有量の低いものになる、ということです。

まあ、私の2サンプルだけの測定でこんな一般的な結論を出すのは無理ですが、 牛乳の放射能汚染まとめ というページにある色々な測定結果(主に securitytokyo さんによる Ge での 長時間測定によるもの)でも、同様に大手メーカーの産地不明のものでは 1-2Bq/kg 程度が多いのに対して、西日本産では 0.1Bq/kg 以上のものは ない、というような結果になっています。

23.3. 牛肉

牛乳で検出されると、牛肉はどうなんだろう?という気分になります。 というわけで、某デパ地下(上の島根県牛乳を買ったのとは別の店舗) で売られていた「国産黒毛和牛切り落とし」というのを測定した結果が 図 88 です。

Figure 88: 某デパ地下で買った国産黒毛和牛。200g を 18時間測定。結果は24時間に正規化。バックグラウンドは24時間測定。

セシウムの値は 9.16± 8.70 Bq/kg となりました。カリウムの割合が重量で 0.3% として補正しています。まあその、たまたま高いものを買ってきたのか もしれないですが、国産牛肉としてこれくらいのものは流通している、という ことです。100Bq/kg が規準ですし、ほとんどの自治体等の測定では検出限界 を 25Bq/kg にしていますからその下の分布はよくわからないわけで、 10Bq/kg が普通なのかどうかはこの1データからは判断しようがないわけです が、、、牛肉に関しては、 Ge で高精度に測定しました、というデータが あまりないようです。

10Bq/kg は食べたく(食べさせたく)ない、と思うなら産地が明らかなもの を買うほうが良いでしょう。もちろん、産地が西日本でも福島県の稲わらを 餌に使いましたといったこともありえるわけですが、確率的には産地不明のも のよりは汚染が少ない可能性が高いからです。
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