9.5. 国・自治体等はもうちょっとなんとかならないのか?
ここまでは、国・自治体・東電といったところはあまり役に立つことはしない
ので、自分や家族を守るためにはどうするか?という観点で書いています。し
かし、日本はそういう、自分の身を自分で守らないといけない国にいつからなっ
たのか?水と安全はタダ、という話はどこにいってしまったんだろう?と思わ
なくもありません。
とはいえ、 3.11 を境に突然駄目になった、というのもありそうにない話で、
おそらく以前から駄目なところは駄目だったわけです。水俣病等の公害や、薬
害への対応を見ると、規模は色々違いますが同じような対応をしてきています。
公害や薬害では裁判になったケースも多く、そういう時には基本的に国や企業
は被告側であり、引き起こした被害は存在しないとか原因は別にあるとか
予見不可能であったとかいった主張を展開するわけです。
つまり、法廷での戦術としては、あらゆる手段を使って被害を過小評価したり
責任のがれをしたりするわけですから、もしも現時点でそのような裁判の可能
性を考慮に入れるなら、国や東電としては今からちゃんと過小評価しておかな
いといけないわけです。
自分の身を守るのは自分でするとしても、自分(と家族とかの近い人)以外はど
うでもいいのかとか、あるいはそもそも日本は果たして大丈夫なのかとかそう
いう種類の問題もあります。この辺、あまり考えがまとまらないのですがまと
まらないままに少し書いてみます。
上に述べたように国の対応がアレな理由の根本が、これが公害問題であって産
業側の利害を無視できないことであるとするなら、それに対する対応は
-
公害問題に対してちゃんと対応できるやり方を考える
-
原子力発電は全面的にやめると決めて利害関係を単純化する
-
それ以外
といったところですが、公害問題、それも起こってしまったものに対して国が
まともな対応をした前例がある気がしないので、多少でもまともになってもら
うためにはまずは原子力発電を諦めてもらうのが必須ではないかと思います。
原子力発電を続けるなら、今回のような事故が10年に1度くらいは起こること
を当面覚悟するのが現実的です。ですから、必然的に、損害賠償その他を可能
な限り抑えようとする意志が働きます。原子力発電をやめることにしても
まあ賠償が莫大なのは同じですが、今後何度も繰り返すのか今回1度きりかと
いう違いはあるので多少はまともになるかもしれません。
今回の事故の対応をまともにするためだけに原子力発電を諦めるのは正しい選
択か?といった議論も原理的にはありえると思いますが、今回の事故は日本で
原子力発電所の運転を始めてからほぼ40年、延べ運転年数で約 1000炉年で起
きたものです。4つが完全に破壊されましたが、これを4台での事故と考えると
250炉年に1台、事故は1つと数えると 1000炉年に1台、という程度で事故がお
きた、ということです。そうすると、もちろん、我々は極めて運が悪くて、
本当は10万炉年に1度のはずの事故が起きてしまったんだ、と楽観的に考えて
もいいですが、そうではなくて現在の日本の原子力発電所は数百から千炉年程
度で事故を起こすものであると考えるほうが現実的です。
今回の地震では、大事故にいたったのは福島第一だけですんだわけですが、
福島第二、東海第二、女川でも電源喪失や冷却不能になる寸前であったようで
す。また、2007年の新潟県中越沖地震でも柏崎原発が危機的状況に陥っていま
す。事故の原因については色々な主張がされていますが、福島第一がたまたま
重大事故になっただけで、今回の地震で他の原発で重大事故になっても全く不
思議はないし、2007年にも重大事故が起こっていても不思議はなかったという
ことだと思われます。既存の原発はどれも同じような問題を抱えているわけで
すし、今回の事故の原因になったところ以外にもまだ欠陥が隠れているでしょ
う。
そうすると、既存の原発をこのまま動かすと、期待値としては 5-15年程度で次
の事故が発生します。現在あるものを耐用年数まで動かすだけでも 1-2回くらい
は事故が起こっても不思議はない、という計算です。
どの原発でも今回のような事故がおこれば相当な範囲が新たに汚染されるわけで、
そんなことが起こってもいいと思っている人はあまりいないのではないかと思
います。しかし、例えば2-3年のうちに全部止めるとしても、その間に事故が
起こる確認は1割よりも高いでしょう。
可能な限り速く全原発を停止し、今後少なくとも現在の方式(浜岡でトラブル続
きのABWRも含めて)は安全性が保証できない限り運用しないことにする、という
意志決定が今後のためにまず必要なことではないかと思います。事故原因の追
求とか補償額のなんとかとかはその後でないと真っ当にできなさそうだからで
す。