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6. TA100 による食品中セシウム検出その4福島林檎篇 (2011/12/9書きかけ )

というわけで、遮蔽もそれなりになったので何かを測ってみよう、 ということで、

を測定してみました。バックグラウンドデータは水をいれた容器で16万秒(ほ ぼ2日)測定したもの、測定は8万秒です。積分スペクトルの下限は 0.35MeV に しています。結果を図 65 以降に示します。

Figure 65: 千葉県産ホウレンソウ。測定時間は8万秒、結果は16万秒に正規化。

Figure 66: 福島県産リンゴ。測定時間は8万秒、結果は16万秒に正規化。

Figure 67: 福島県産でないリンゴ。測定時間は8万秒、結果は16万秒に正規化。

みての通り、ホウレンソウと福島県産でないリンゴではバックグラウンドを引 いた残りが 0.8MeV のところでは負になっていて、何かが検出できているわけ ではないことは明らかです。ホウレンソウではカリウムがあるように思われま す。福島県産でないリンゴではカリウムも有意には見えていません。

これに対して、福島県産リンゴでは 0.8 MeV のところでは青い線の誤差分散 の3倍近い値になっていて、そこから 1.5MeV までではあまり増えていません。 つまり、カリウムではない何かでバックグラウンドとの差がでていて、これは 有意である可能性が高いわけです。

有意だとすると、これは「やさしお」の 1/20 程度のカウントですので、 Cs-137, 134 が 1:1 として 30Bq/kg 程度のはず、ということになります。但 し、コンプトンのところのみている割合がセシウムのほうがカリウムより小さ いので、もう2-3倍程度多い可能性はあります。

これが本当なら、その辺のコンビニで買ってきた福島産リンゴはこんな感じで ある可能性があるわけで、本当かどうかは非常に気になります。ということで、 都内某所、と書くこともない、私の旧所属の国立天文台にある Ge 検出器でス ペクトルをみたのが図 68 です。

Figure 68: 福島県リンゴの Ge 検出器によるスペクトル。緑、青、黄色が Cs-134, Cs-137, K-40 の 0.6, 0.662, 1.4MeV のピーク。

これはきちんとした定量ではなくてスペクトルの形をみているだけですが、 Cs-134, 137 が綺麗にでていることはわかります。正確な定量はデータがきた ら追加しますが、Ge 検出器でこれほど明瞭なピークがでているのでかなりの量 のセシウムがあることは確実です。

つまり、TA-100 + 鉛遮蔽で有意にセシウム由来と思われる領域に信号がでた ものを Ge 検出器で測定したら確かに間違いなくセシウムがあった、と結論で きます。

もちろん、TA-100 で偶然3σレベルの数値だったものが実際にセシウムを 含むものであった、という可能性はまだゼロではないですが、実際に検出でき た、というほうがありそうです。

リンゴは比較的セシウムがでやすく、福島市や伊達市のものでは数十 Bq/kg でることは珍しくないようなので、そういうものが市場にでまわっていること も当然ではあります。そのレベルのものなら 20万円程度の機械で検出可能で あるようです。
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